コンタクトレンズを使用での目の健康と病気について

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眼底の病気

網膜裂孔(もうまくれっこう)

網膜裂孔は網膜の破れ目のことで、網膜剥離をひきおこすため問題となります。網膜の変性・萎縮によって生じるまるい穴[萎縮性円孔]と、硝子体と網膜が癒着していて網膜が硝子体にひっぱられて生じる裂け目[牽引性裂孔]とに大別されます。
【原因】萎縮性円孔は20歳代を中心とした若年者に多く、牽引性裂孔は50歳代を中心として中年層に多く認められます。網膜裂孔形成の要因として網膜格子状変性、後部硝子体剥離、近視[強度近視]があげられます。 眼球の打撲によって生じることもあります。網膜格子状変性は周辺部[赤道部]に生じた格子状の外観をした帯状、または紡錘形の網膜の薄い部分です。生まれつきあるのではなく、小児期から青年期にしだいに形成されます。全人口の5〜6パーセントに存在し、その約半数で両目に生じるといわれています。近視眼では10パーセント、強度近視では20パーセントの頻度で認められるといわれています。裂孔原性網膜剥離の3分の1から2分の1は、格子状変性にともなった裂孔が原因といわれています。若年者では、変性巣のなかに萎縮性円孔が10パーセントを超える頻度で合併するとされています。また、変性巣の縁は硝子体と癒着していますので、硝子体が網膜を牽引した結果、変性巣の縁が裂けて裂孔ができることがあります。
後部硝子体剥離は硝子体の老化現象で、60歳前後に多くおきます。近視眼、とくに強度近視ではより早くおこります。硝子体はもともとはゲル[寒天]状の組織で、網膜を内側から押さえつけていますが、年齢とともに液化・変性が進行し、硝子体ゲルは収縮・虚脱して網膜からはがれることがあります。このとき、網膜と硝子体が癒着した部位がひっぱられて、牽引性裂孔ができるのです。
近視、とくに強度近視では後部硝子体剥離が早くおこる、網膜格子状変性の頻度が高い、などの事実が知られており、網膜裂孔もより高頻度に、より若い年齢で生じる傾向にあります。また強度近視[変性近視]では後極部網膜・脈絡膜が萎縮して、黄斑部に円孔[黄斑円孔]ができることがあります。
【症状】
初期症状としては、飛蚊症[眼前に糸状、点状、円形などのいろいろの形をしたものがみえ、目の動きにつれてゆらゆら動く]や光視症[暗所で視野の一部に光が走る]が自覚される場合があります。これらの症状は、硝子体が変性・液化し後部硝子体剥離が生じるときに出現することが多く、この時点では網膜剥離はないか、あってもわずかです。また、牽引性裂孔ができるときに、血管もいっしょに断裂して硝子体に出血することがあります。出血が軽ければ、その影が網膜に映って飛蚊症を自覚するにとどまりますが、出血が多い場合は視力が急に低下します。しかし、幼少年から青年の円孔形成には後部硝子体剥離が関与しない場合が多いため、このような例では無症状のことが多いようです。また中高年の例でも、無症状の場合が少なくありません。
黄斑部の中心窩の部分に、円孔ができることがあります。原因として変性近視、黄斑変性症、外傷などがありますが、原因不明の例もあり、中高年の女性に多くみられます。中心窩の網膜がなくなっているため、みようとする部分がみえません[中心暗点]。変性近視の例では網膜剥離をおこすことが多く、注意が必要です。
【治療】
網膜裂孔の治療は、網膜剥離への進行を予防することです。網膜裂孔は自然にふさがってしまうことはありませんが、とくに硝子体の変性がほとんどおこっていない若い人の円孔の場合は、放置しても網膜剥離をおこさない場合も少なくありません。しかし、牽引性裂孔の場合は、まず網膜剥離をおこします。網膜の裂孔や円孔のみで網膜の剥離をともなっていない時点では、裂孔の周囲をレーザー光凝固で焼き固めるだけで、網膜剥離の予防ができることが少なくありません。ただし、硝子体によって網膜が強くひっぱられた場合には、光凝固をしても網膜が剥離してしまう場合があります。網膜剥離をおこすと、手術が必要です。
網膜裂孔は無症状の場合も少なくありません。網膜格子状変性や強度近視のある人は定期検査が必要です。家族に網膜剥離や網膜裂孔の人がいる場合も、一度眼底検査を受けておいたほうがよいでしょう。飛蚊症や光視症を自覚したらすぐに眼科を受診してください。

網膜剥離(もうまくはくり)

網膜が網膜色素上皮からはがれてしまう状態です。原因によって裂孔原性網膜剥離と、続発性網膜剥離[非裂孔原性網膜剥離][下図参照]に分けられます。
【原因】
裂孔原性網膜剥離は、網膜裂孔を通って、硝子体のほうから網膜の裏側に液体[液化硝子体]が回り込み、網膜がはがれるものです。続発性網膜剥離は、ほかの眼疾患によって生じるもので、ぶどう膜炎[原田病など]、眼内腫瘍[網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫、網膜血管腫、転移性腫瘍など]、増殖性網膜症[糖尿病網膜症など]、網膜色素上皮症、コーツ病などでおこります。網膜血管や脈絡膜から網膜の下へ漏れたり、にじんだりした液がたまって剥離が生じるのです。また、増殖性網膜症では、網膜が前方にひっぱられて網膜がはがれます。
【症状】
剥離した網膜は光を感じる機能を失うため、網膜剥離が進行してくると、その範囲に一致した視野欠損が生じます。たとえば、上方の網膜が剥離すると下方がみえなくなります。裂孔原性網膜剥離では剥離は徐々に広がり、視野欠損もそれとともに大きくなります。剥離の進行は若い人では比較的遅く、高年者ほど早い場合が多いようです。
 また、上方の網膜剥離は、網膜下にたまった水の重みで早く進みます。剥離が黄斑部に達すると視力が低下し、このとき初めて気づく場合も少なくありません。黄斑円孔による網膜剥離では、中心暗点が拡大していきます。網膜全体が剥離すると全くみえなくなります。
【治療】
裂孔原性網膜剥離は手術で治します。 続発性網膜剥離では原因疾患に対する治療を行ないます。網膜は剥離した状態ではしだいに障害が現われ、一度黄斑部がはがれると、剥離が治っても視力の低下が残ることが多いので、手術はできるだけ早く行なう必要があります。また、網膜剥離が長くつづくと、網膜の表面や裏側、硝子体に増殖性変化という現象がおこって、網膜をひっぱる力が強くなったり、はがれた状態で網膜が固まって治りにくくなります[増殖性硝子体網膜症]。手術の前も、進行しないように、極力、安静が必要です。
裂孔原性網膜剥離の手術の原理は、裂孔部分の網膜をその下の色素上皮に癒着させて、網膜下へ水が入りこむ通路をなくすことです[裂孔閉鎖]。そのために電気凝固[ジアテルミー凝固]、冷凍凝固、レーザー光凝固などが行なわれます。また、裂孔の閉鎖を助けるために、網膜の下にたまっている水を抜いたり[網膜下液排出]、眼球に外側から板状または棒状のシリコンを縫いつけて、眼球壁を網膜裂孔に押しつけたりします[強膜内陥術]。 近年手術機器や技術の進歩に伴い、硝子体を切除し裂孔閉鎖や網膜下液排出を眼内から行う硝子体手術が行われる例も増加しています。特に、増殖性硝子体網膜症や網膜裂孔が巨大な例では硝子体手術が必要となる事が多くあります。

中心性漿液性網膜脈絡膜症(ちゅうしんせいしょうえきせいもうまくみゃくらくまくしょう)

眼底中心部[黄斑部]がはれる病気で、多くの場合、中年男性の片方の目におこります。原因はわかっていませんが、ストレスや過労が関係しているといわれています。
【症状】
軽度の視力低下[0.7以上のことが多い]、視野の中心だけが暗くみえる[中心暗点]、ものがゆがんでみえたり[変視症]、小さくみえる[小視症]などの症状が自覚されます。
黄斑部のはれは、脈絡膜からの水分[漏出液]が網膜の下にたまって生じる限局性の漿液性網膜剥離です。正常な状態では、網膜色素上皮が脈絡膜と網膜との間の防壁の役目をしており、漏出液がたまることはありません。この病気では、網膜色素上皮の1か所ないし数か所に障害が生じ、この部分から漏出液が漏れ出てくるのです。網膜色素上皮の障害には、脈絡膜の毛細血管の循環障害が関与しているといわれていますが、はっきりしたことはわかっていません。
【診断】
診断は問診や眼底検査によって比較的容易にされますが、ときに網膜色素上皮症やぶどう膜炎などで同様の眼底所見が認められるので、鑑別診断が必要です。腕の静脈に蛍光色素を注射して眼底写真を撮る蛍光眼底撮影で診断します。この検査により、網膜色素上皮の障害部位が蛍光色素の漏出点として認められ、漏出の程度もある程度判断できます。
【治療】
黄斑部のはれは3〜6か月で自然にひいて、症状を残すことなく治ることもよくあります。したがって、特効薬ではありませんが、まずは循環改善薬やビタミン製剤などの薬物療法で経過を観察するのが一般的です。また、心身の安静に心がけ、過労をさけることが必要です。しかし、この病気は再発することもよくあり、ときには半年以上長引く場合もあります。網膜は剥離した状態では栄養状態がわるくなり、これが長期間つづくとしだいに網膜は変性して、治っても視力が低下したり、網膜にしわができて、ものがゆがんでみえたりします。このため、再発をくり返したり、いつまでも治らない例、また、初発例でも蛍光眼底撮影で漏出の程度が強く、長引くことが予想される場合などには、レーザー治療[光凝固]が行なわれます。
これは蛍光眼底撮影で確認された漏出点を、レーザー光線で焼き固めてしまう方法です。そうすると漏出が止まり、通常3週間前後ではれがひきます。ただし、漏出点が中心窩に近い場合には、レーザー光線によって中心窩が障害される危険がありますから、このような場合には光凝固は行なえません。この病気は自然に治ることも多く予後のよい疾患ですが、再発もよく認められます。再発の予防に絶対的な方法はありませんが、一度この病気にかかった人は、過労やストレスをさけることが大切です。

黄斑変性症(おうはんへんせいしょう)

物をみる中心である黄斑部がわるくなる病気で、先天性[遺伝性]のものと老人性のものに大別 されます。ほかに強度近視[変性近視]によるものなどがあります。
先天性のものは両眼性で、視力の低下や色覚異常などからみつかる場合が多いようです。スターガルト病、卵黄様黄斑変性症など、いくつかの病型に分類されます。病型によって経過は異なり、小児期に発病するとは限らず、成人後にみつかる場合もあります。
【症状】
老人性のものは加齢黄斑変性症と呼ばれ、萎縮型と滲出型に分けられます。萎縮型は黄斑部の色素上皮や脈絡膜の毛細血管に萎縮性変化が生じ、視力がゆっくりと低下します。主に治療対象となるのは滲出型で、この場合黄斑部の網膜の下に脈絡膜から新生血管が生えてきます。ごく初期には、視力の低下は軽く、眼底には黄斑部の網膜に少し変色した部分[網膜色素上皮の変性、萎縮]や、ドルーゼと呼ばれる白色斑が認められます。新生血管は正常な血管と違って、血液中の水分などを漏らすため、新生血管が生えてくると、その周囲の網膜がはれます。また、新生血管は壁が弱く、容易に出血します。
このような状態になると、視力が低下し、ものがゆがんでみえたり[変視症]、真ん中だけがみえにくくなります[中心暗点]。 この状態がつづくと、網膜自体が障害され、出血の後には線維性組織が異常に増殖するため、視力はさらにわるくなります。最終的には、黄斑部の網膜は円板状に完全に萎縮して、中心がほとんどみえなくなります。
【治療】
新生血管が中心窩に存在するか否かによって治療法が異なります。新生血管が中心窩に及んでいない場合、レーザー光凝固が有効です。蛍光眼底撮影で確認された新生血管をレーザー光線で凝固・閉塞するのです。ただし、不充分な光凝固は悪化を誘発したり、また新生血管が再発することもあり、光凝固の成功率は7割程度です。しかし、新生血管が中心窩から離れている場合、光凝固が比較的容易で奏効する例が多くあります。新生血管が完全に凝固・閉塞されれば、中心視力は良好に保たれます。
新生血管が中心窩に及んでいる場合、治療が困難で視力予後が不良な例が多くなります。このような場合は、新生血管の光凝固を施行すると中心窩の網膜も傷害されるため、視力がかなり低下してしまいます。それ故、新生血管の栄養血管の光凝固、低線量放射線療法、抗血管新生薬、手術療法[脈絡膜新生血管抜去術、中心窩移動術]、光線力学療法、温熱療法など様々な治療が行われています。この中で、光線力学療法は光感受性物質を使用した光凝固療法であり、現在臨床試験が行われています。比較的良好な結果が得られているようですが、現時点では定まった評価を得るには至っていません。一刻も早い治療方針の確立が望まれる現状です。

滲出性網膜炎(しんしゅつせいもうまくえん)/コーツ病

網膜の血管の異常によって、血液から大量の脂肪様物質や水分が漏れ出て、網膜内や網膜下にたまる病気です。10歳以下の男児に多くみられますが、成人後にみつかる例もあります。ほとんどは片眼性です。原因は不明ですが、遺伝性はないとされています。
【症状】
網膜の一部の血管の壁に異常があり、毛細血管や細い動静脈の拡張、血管瘤、閉塞、出血、黄白色の浸出斑、網膜のはれが生じます。このような変化は通常、眼底の周辺部より始まり、ゆっくりと進行して黄斑部に及び、視力は極端に低下します。さらに進むと、網膜剥離をおこして、ひとみがネコの目のように光ってみえる[猫目、白色瞳孔]ようになり、網膜芽細胞腫などと間違われることもあります。
【診断】
特徴的な眼底像により容易な場合もありますが、網膜剥離をおこしている例では、網膜芽細胞腫との鑑別が必要となります。鑑別診断には蛍光眼底撮影や超音波断層撮影、CT[コンピュータ断層撮影]、磁気共鳴映像法[MRI]が利用されます。
【治療】
初期にはレーザー光凝固や冷凍凝固などで異常血管を凝固して固めると、浸出性変化が改善できる場合があります。しかし、進行例では有効な治療法はありません。
実際には、小児の片方の目に多いため、発見が遅れることが多く、視力の予後はほとんどの場合よくありません。